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海外事例
かも、再びブータンに行く #4
2019年10月19日

首都ティンプーから車で1時間ほどのパロという街にある教員養成大学でワークショップをしてきました。
パロはブータンで唯一の国際空港があり、ブータンの入り口ともいうべき大きな街。パロ教育大学には、小中学校の先生を目指す学生が約1,000人学んでいます。

今回は、一年生33人と算数をテーマに2時間のワークショップ。「池に飛び込めゲーム」と「3人のモリス」(それぞれ『カエルの算数』『世界の数学』より)をやりながら、正解が1つでない算数と、そこで育まれる力について考えていきました。

ブータンの教員は子どもたちにすぐ答えを教えたがって、考える時間をあまりとらないと各所から伺っていたのですが、まだ入学したての彼らは効率や成果より も考えることが大好き。わいわい話し合いながら算数ゲームを楽しんでいました。(ブータン人女子大生とモリスを本気でやって負けました笑)

素敵だなと感じたのは、学生たちに「算数って答えが1つに決まる学問だと思う?」と聞いてみると、ほとんどの学生が即座に「ノー」と答えるのです。でも、 「算数の成績つける時って答えが合っているかどうかで見がちじゃない?」と聞くと、それは「イエス」だそう。ブータンは小学3年生から数年おきに全国テス トがあって、その成績で行ける学校が決まったりするので、どうしても評価の最重要ポイントがその点数になってしまうらしいのです。

正解が1つじゃない算数をしたいけれど、それを評価する手法や仕組みがないから結局は知識重視になってしまうー。ブータンの教育課題の一つを垣間見たような気がしました。

 

ワークショップの最後に、学生たちにこんなメッセージを伝えました。

「子どもの頃に今のブータンの状況をイメージできてた人はいますか?(全員首を横に振る)そのぐらいブータンはどんどん変化していってるってことだよね。 じゃあ、みなさんがこれから担当していく子どもたちが大人になる頃は、どのようなブータンになっているかイメージできる?(また全員首を横に振る)

イメージできないとしたら、それは答えが1つに決まっていなくて様々な可能性があるということですよね。答えが1つに決まっている社会なら、その中で求め られている知識やスキルを与えればいい。でも、答えが決まっていない社会で生きる子どもたちを育てるなら、今日やったゲームと同じように、いま・ここを積 み上げていく学びを大切にするしかないと思うんです。

そして、その学んでいく過程を子どもたちが嫌になってしまわないように、楽しい学びが大事。今日皆さんが楽しそうにしている様子を見ていました。でも、楽しさも幸せも一人ひとり形が違います。こういう風に楽しめ!と限定されたら楽しめないですよね。

それぞれの形で楽しめる学びがあるクラスをつくっていってください。そういった学びが積み上がっていくと、国の幸せGNHにつながっていくのではないでしょうか?みなさんがブータンらしさの上に、新しい教育をつくっていってくださるプロセスをご一緒できると嬉しいです」

学生たちは真剣な顔をして聞いてくれました。スマホで録音しながら聞いてくれている子もいました。

終了後に学長の先生とお話しさせていただきましたが、ブータンらしく「過去を尊重し、今を大切にし、未来に想いを馳せる」ことができる先生を育てたいと仰っていました。西洋化ではない、ブータンの価値観に根ざした教育改革が始まろうとしています。

かも、再びブータンに行く #3
2019年10月18日

ブータンのJai Bir Rai教育大臣と教育について意見交換させていただきました。
日本でいうところの文部科学大臣に相当する偉い方ですが、さらにブータンの学校教育部門、カリキュラム作成部門、教育評価部門それぞれのディレクターという、ブータンの教育をデザインされている主要メンバーを集めていただいての貴重なミーティング。

とにかくいろいろな話が出たのですべては書けませんが、日本が培ってきた教育のアイディア(失敗経験も含めて)や、GEMSのアプローチにとても期待していると言っていただきました。政権が変わり教育改革がはじまってはいるけれど、理数教育に弱さを感じているそうです。

この教育改革の話が特におもしろかったのですが、ブータンといえば国民総幸福量(GNH)という指標を生み出したことで有名ですよね。なので、教育の中にもGNHの価値観(value)を取り入れているとのことでした。

カリキュラム作成のディレクター曰く「価値観(value)、スキル(skill)、知識(knowledge)の順で大事にしている。他の2つに比べて 遥かにvalueが優先されます」とのこと。これまでのコンテンツベースの暗記型教育から、応用ができる力や、多様性を重視した教育(Skill & Value Based Education)にシフトしていこうとしているのだそうです。

さらに、学校教育のディレクターは「GNHに根ざした教育を探ることは、ブータンの子どもたちが幸せになるだけでなく、世界中の子どもたちが幸せになる方 法をつくることにつながります」と続けて仰いました。国内のことだけでなく、自分たちの教育改革で世界の幸せまで意識していこうという姿勢は、“誰も取り 残さない(No one will be left behind)”を体現しているかのようですね。

現在の国王様も、国にしっかりと根ざし、かつ、グローバルに活躍できる人材育成を望んでいらっしゃるということもあり、その土地ならではの教育アプローチ(Placed Based Learning)を模索し始めたブータン。

近代化とともに急速に進む経済発展の波に負けて、ブータン人として大切にしてきたものを手放してしまわないような、柔軟で強靭なリジリエンスと思考力をもった子どもを育てる教育のチャレンジが始まっています。

そのような動きの中でGEMSがどのように貢献していけるのか、ジャパンGEMSセンターのチャレンジも始まったばかりです。

かも、再びブータンに行く #2
2019年10月17日

3年生に続いて、4年生とは『カラーアナライザー』のワークショップ!
学年的に色の波長など知識の部分は割愛して、秘密のメッセージづくりを中心にやりました。

まずは、回折格子(分光シート)を通して電球の光を見てみると、白い光の中に隠されたさまざまな光の色が虹のように現れます。ブータンでも虹は7色という のが通説らしいのですが、子どもによっては「僕は6色にしか見えないけど?」「わたしは9色見える!」など意見がバラけます。

そこで、色の見え方は一人ひとり違うんだという話をします。1つの理由は、全く同じ身体の人はいないから。もう1つの理由は、色は名前がついていないと認 識できないから。アフリカのある部族の人は虹が2色にしか見えないんだよーという話も添えつつ、色の見え方に正解はないから自分の見え方を大事にしてねと 伝えました。

そこから、赤と緑のカラーセロファン越しに物を見ると色が変わる不思議を体験します。これに子どもたちは大盛り上がり!お互いの民族衣装の色の変化を楽しんだり、教室の掲示物を見たり、「何でこうなるのー!?」と不思議の世界にどっぷり浸かっていきます。

じゃあ色が変わる仕組みを使って、赤(緑)のセロファンを通してみると読める秘密のメッセージを描いてみようというのが次のステップ。ここで驚いたのは、 子どもたちが躊躇せずに描き始めたことです。完全に仕組みを理解しているわけではないのに、とりあえず描いてみて、上手くいかなかったら調整してと、 Try & Errorのモードにスッと入るのです。

全てのブータンの子がそうではないかもしれませんが、前回も含めてこれまで見てきた子たちは、「先行知識がなくてもとりあえずやってみる」という姿勢が日本の子たちよりも強い感じがします。だから、GEMSのような体験学習は特に合うんだろうなぁ。

最後に、世界の見え方について話をしました。今日やったように、色の見え方は一人ひとり違う。つまり、一人ひとりの見えている景色が違うんだ。世の中には いろんな見方があって、みんながハッピーになるためには一つだけの見方で押し通すことは難しいかもしれないね。自分はこういう風に見えてるんだよってこと を、他の人とどうやって共有できるかなぁ?

国民総幸福量(GNH)を重んじるブータンだからこそ、多様な意見や価値観を疎外することなく進んでいってほしいという願いも込めて話しました。これから変わっていこうとしているブータンの教育に、少しでも貢献していきたいなぁと改めて感じた2時間でした。

かも、再びブータンに行く #1
2019年10月16日

ティンプーにある私学ペルキル・スクールで、小学3年生の子たちと『カエルの算数』のワークショップをしてきました。
「今日は算数をやるけど、ノートも鉛筆も使わないよ。使うのはみんなの頭と、心と、体だけ」という投げかけから始めると、不思議そうな顔をする18人の子どもたち。

1番〜12番まで12匹のカエルを並べて、2つのサイコロを振った出目の合計の番号のカエルが1マス進めるというルール(例えば、2と3が出た場合2+3=5番のカエルが進む)の「カエルの池ゲーム」にチャレンジしました。

ゲームを始める前に何番のカエルが1着になるか予想を聞くと、10番・11番といった大きい番号や、2番・3番といった小さい番号を予想する子が半分ぐら い。理由を聞くと、「サイコロ2つ降るんだから大きい数が出るでと思う」という子や、「速そうな色をしているから」という子もいます。日本の小学生だと確 率で考える子が多いのですが、ブータンの子は感覚的な子が多い印象。

ゲームが始まって20回ほどサイコロを振ると、(今回は珍しく)6番〜8番あたりのカエルがよく進みます。そこで、さっきと変えてもいいからもう一回何番が1着になると思うか予想を教えて〜と聞くと、ほとんどの子が7番の周辺に予想を変えたのです。

この柔軟さと、目の前の状況から思考する力!無理に頭で考えようとして動けなくなるのではなく、いま起きていることを観て柔軟に判断していけるのはすごいなぁ。。

ゲーム終了後に確率の解説をして、これに気づいていた人いる?と聞くと、意外と確率で考えていた子が少ないので二度驚きました(笑)ブータンの子たちは、純粋に目の前の事象と向き合っているのですね。

ちなみに、このクラスの入り口にはClass-3 is very hungry for learning(3年生は学ぶことにとっても飢えてるの!)の張り紙が。その期待に答えられたかなぁ?笑

かも、台湾に行く #3
2019年05月18日

台湾を代表する彫刻家 朱銘の作品を収める美術館に来ました。

岩をダイナミックに削ったり、金属管を曲げたりすることで人の微細な動きや感情の機微が表現されている作品たちは見事の一言。広大な敷地を活かした屋外展示が多く、のんびりと台湾の光や風を感じながら作品と向き合える素敵な空間です。

この美術館のもう一つの特徴は、幼児教育に力を入れていること。視覚、聴覚、触覚などを刺激して、子どもたちの感性が育つようなアクティビティがたくさんあります。

アクリル板を挟んで座り、お互いに相手の顔をトレースし合うもの。食器が固定された机の上でビー玉や木の玉を転がして音を楽しむもの。こういうhands-onの展示は大人でもワクワクしますよね♪

台北市からは少し離れてしまうのですが、猛プッシュスポットです!

かも、台湾に行く #2
2019年05月17日

台北市から車で1時間ほど行った海沿いにある、野柳ジオパークにやってきました。
ここは、波や風によって削られた不思議な形の岩を見ることができることで有名とのこと。

ガイドさんに案内してもらいながら、なんでこんな形になったんだろう?ここまでなるのにどれだけの年月が経ったのだろう?と想像して歩くのは本当におもしろい時間でした♪

これぞ必殺「妄想歩き」!
珍しい地形の場所を歩くときは、どうしてこうなったんだろう?と想像&ぺちゃくちゃしながら歩くと楽しいんです^^

GEMSだと『砂浜』や『対流』、『石にこめられたお話』といったプログラムで地形の変化について扱っていますが、実際に現在進行形の地形変化を見るとやはり感動しますね。

外国のジオパーク、おススメです!

かも、台湾に行く #1
2019年05月16日

GEMSセンターの視察ツアーで台湾に行ってきました。
ブータンでの教育プロジェクトに関わる関係もあって、アジア圏の教育アプローチを学ぶ旅。

初日は、台北市内にある国立の科学教育館に。国立だけあってとにかく大きい!平日だったので、小学校・中学校の遠足で来館している子たちがたくさんいました。

展示はきれいに造られているのですが、知識ベースのものが多く、体験して学ぶhands-onが少なめな印象。スタッフさんもフロア案内係という感じで、依頼されたガイドツアー以外は積極的にサイエンスコミュニケーションすることはないようでした。

それでも、新しく造られたコーナーでは実際に体を使って学べるような展示もあったし、STEAMを意識しているんだろうなぁという部分も見受けられたので、これから変わっていくのだと思います。

外国の科学館は、その国の教育の雰囲気がわかるので楽しいですよ♪

アメリカ滞在記 #8
2018年09月26日

いよいよ日本に帰ります。
最後のレポートは、カリフォルニアにおけるサステナビリティ(SDGs)への意識や取り組みについて書いてみます。

ジェンダーや人種差別、環境問題に昔から意識的だったカリフォルニアでは、特にSDGsを街中で見かけることはありませんが、当たり前のようにいろいろなことがされていました。

それでも4年前に訪れた時に比べると、マイクロプラスチックやLGBTへの配慮などは顕著に見受けられました。それはSDGsの登場と無関係ではないのだと思います。

教育の分野でも、LHSの新しい教材では州ごとに内容を変えるなどローカルとグローバルの両方を意識している方向性が明確に感じられます。

今回学んだことを日本でGEMSの中にしっかり反映させて、また10月から頑張ります!みなさんワークショップでお会いしましょう!

 
アメリカ滞在記 #7
2018年09月26日

5日目は、San FranciscoにあるCalifornia Academy of Scienceにやってきました。
ここは研究機関に附属している、日本でよく見るような「The 科学館」という感じ。

展示は決して目新しくないのですが、空間が広く開放感がある印象。掲示物も地球環境のことやサステナビリティへの注意喚起が中心で、“科学情報提供のための科学館”でした。これまで観てきたのが“科学で遊ぶための科学館”だったので、ずいぶん違います。(ボランティアもシニア中心でした)

ただ、やはりアメリカの科学館はどこも「モノには近く、壁から遠く」というデザインが魅力的です。展示物は小さな子どもでも近づいて観られるように、それでいて仕切りや天井から距離がとられているのでゆったり観ることができます。

人間は、狭い空間だと副交感神経が働いてリラックス物質が出てきます。逆に広い場所では、どこから危険が迫るかわからないので、常にセンサーを働かせて脳がアクティブになります。広く明るい館内は、子どもたちの脳を活性化させて思考を動かすのに一役買っているのだなぁと感心しました。

土地が広いからこそできることかもしれませんが、環境が子どもの学びを動かすということが実感できました♪

▼ California Academy of Science
https://www.calacademy.org

アメリカ滞在記 #6
2018年09月24日

今日味わった感動をどう文章にしていいものか…!
4日目は、LHSの前ジャパンGEMSセンター担当をしてくれていたTraci&パートナーのLoriに連れられて、San FranciscoにあるBay Area Discovery Museum(BADM)にやってきました。

Traciが「私の一番好きなミュージアムの一つよ!」と言うので期待を膨らませていたら、入り口でまさかの「子連れでないと入場できません」と。Loriが「彼らは日本の専門家で視察に来たのよ」と説明してくれたら、それは失礼とわざわざスタッフが出て来て案内してくれました。なんとも贅沢♪

施設は、1900年代初頭の民家をリノベーションしてエリアごとに建物が分かれています。建物どうしの間に順路や通路はなく、子どもたちはやりたいものがあるところに自由に移動するのですが、間のスペースにも楽器があったり、どこにでも絵をかけたり、おもしろいものがたくさん

アートしたり、カラダ動かしたり、クラフトしたり、さりげなくSTEMの文字も!この自由度の高さや、遊びの中に学びをちりばめるアプローチは、レッジョエミリア教育をベースにしているとのこと。Center for Childhood Creativity(CCC)という団体がバックアップをしているんですって。ここも気になる!

レッジョエミリアはMIが意識されているプログラムなので、BADMの施設もさまざまなジャンルのアクティビティを体験することで、子どもたちがいろんな知能を育てていけるように設計されています。どれもシンプルな造りなんだけど、自分では思いつけないなーというものばかり。

でも、どのアクティビティも子どもたちが自分で遊び(学び)のストーリーをつくっていけるようになっているところが魅力的!例えば、見立て遊びで「ここは水の中でね、でも僕はカエルだから平気でね…」と自分で想像を膨らませる力は、自分で自分を育てる力(自立した思考力)につながります。

そして、この施設にも保護者向けに子どもたちの遊び(学び)をどうサポートするのが良いかアドバイスがアクティビティごとに書いてあります。これもCCCがデザインしてるんですって。科学者と教育者と芸術家が生み出した夢のような遊び場に圧倒されてしまいました!

最後に、幼児向けエリアの入り口に掲げてあった素敵な言葉を。

「子どもたちは遊ぶほどに自信を深めていきます。それは1時間であることもあれば、数週間に及ぶこともあります」

▼Bay Area Discovery Museum
https://bayareadiscoverymuseum.org

▼Center for Childhood Creativity
https://centerforchildhoodcreativity.org

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